イラスト:鷲田悟志(渉成園担当庭師)
渉成園の主景をなす見処、印月池・南大島へようこそ。
目次
印月池
右手に広がるのは、水面に東山から上る月を刻む池。庭園の中心に位置する大池は渉成園の主景です。大切なお客様をもてなすにふさわしい広々とした景色となっています。
かつて、舟着き待合「漱枕居」から「臥龍堂の鐘の音」を合図に、客人は舟で北大島縮遠亭への船旅を楽しんだのち、お茶のもてなしを堪能しました。
野趣あふれる景色作り
印月池に浮かぶ南側の島を「南大島」と呼んでいます。
南大島には一年中野花、下草が揺れています。
通常、それらは日本庭園では雑草としてすべて除去すべき対象ですが、あえて部分的に残しています。
要所には手を入れ、見所となる勇壮な石組みは際立たせ、その添景となる紅葉の美しいハゼやススキをふさわしい場所に残し、一年を通して趣深い風景が見られるよう創意工夫を行っています。
南大島のサウンドスケープ
草は虫の住処。夏の終わり、職人たちは園内の外周から草刈りをスタートさせます。次第に包囲網を縮めながら南大島へと虫達を追い込んでゆきます。
秋の芝生広場では南大島からの虫達の大合唱が響き渡ります。
南大島の景
南大島の景観の特徴は起伏のある地形と美しい稜線ですが、周辺家屋の目隠しとして大きく育てられたクスノキがその稜線を隠し、また成長した根が石組の間に入り込み景石に影響を及ぼしていた為、慎重に協議が進められ、2016年伐採工事が実行されました。
伐採の結果、南大島の美しい稜線、荘厳な石組の景色が復活しました。周辺家屋の景観も含め、その姿が渉成園らしい特色ある魅力を持つ景色になるような提案を常に考え続けています。
響きあういのち、生物多様性の島
京都駅周辺市街地エリアは緑地の乏しいコンクリートジャングル。その中の陸の孤島である渉成園。
人間にも、いきもの達にとっても貴重なレフュージア(避難地)がこの庭園です。
私達職人は、庭園内でも特に参観者から池を隔て隔離された南大島に着目し、通常日本庭園からは排除されるような多様な生物群でさえも生息できる環境を育んでいきたいと考えています。 東本願寺御用達として、真宗大谷派の教えを受け止め「あらゆる命が守られ、響き合う場所」として育成管理を進めております。
渉成園担当庭師
太田陽介、鷲田悟志
南大島における生物多様性の一部を可視化 ※生物名は弊社生物調査データに基づきます。